パサンガン1(ガンサ・クンダン)パサンガン/pasangan(対・対となる相手)1-ガンサ・クンダン-ガムランの音楽は対(二人)が基本単位になっています。実際の演奏では、ゴンクビャールでは、20人を超える大編成になりますが、それをこまかく分けていくと、二人づつのペアがいくつか出来ます。 例をあげてみると、ガンサのポロスとサンシ、クンダンのワドンとラナン、レヨン4人のなかの2人。これらの2人は、2人一組で1つのメロディー(音の流れ)やリズムを作っています。 それぞれの楽器ごとに、どんな風に対になっているのか、見てみましょう。 ガンサ(プマデ・カンティル) ポロスとサンシという2つのパートで一対となります。 ものすごく簡単な例をあげると、たとえば、ドレミファソラシドというメロディーを演奏するのに
では、実際の曲の中で、どのように対となっているのか、具体的にみてみましょう。 まず、コテカンという方法で装飾音を作る部分について。 ポロスの人は主に表拍を、サンシの人は 主に裏拍を担当し、2人で1つの音の流れを分担してたたきます。 実際の曲では、上に書いた例よりもっともっと複雑な音・リズムをすごいスピードで両者がたたき、それがうまく合うと、きれいな音の流れができますが、これがとても難しいのです。お互いに、正しいリズムでたたいているつもりでも、ほんのちょっと二人の気持ちがずれると、とたんに、合わなくなってしまいます。一例をあげてみます。(ガムランを知らない方でも、イメージが湧きやすいように、あえてドレミで書きます。・は休符と考えてください。)
一段目に、”基本となる音”が、書いてありますが、これは、曲の中ではジュブラグなど、低音の楽器が奏でる音です。この、”基本となる音”に対して装飾音を作るのが、コテカンです。このコテカンは、ピアノなどで言う、”和音”に対してアルペジオのパターンを何種類も作ることが出来るのと同じように、一つの”基本の音”に対して、一定の法則に従って何種類かのパターンを作ることができるようです。 ポロス・サンシの2人で一組とすると、フル編成の場合、プマデが2組・カンティルが2組で合計8人。4人のポロスと4人のサンシが、一緒にコテカンを演奏します。(曲によっては、プマデとカンティルが異なったメロディーを演奏することもありますが。)そしてさらに、ポロスはポロス同士、サンシはサンシ同士も演奏の息を合わせる必要があります。 この、コテカンがぴったり合った時のうれしいこと!2人一組で演奏するが故の難しさもありますが、その反面、物理的に、絶対に1人ではたたけないようなスピードで演奏することが可能です。単純に言えば、1人でたたける速さの2倍の速さで音を並べることができる、ということになります。この、たたみかけるような演奏方法コテカンによって、ガムラン特有のきらきらした音の波を作り上げることができるのです。 次に、コテカンでない(装飾音でなく、メロディーのような音をたたく)部分について。ここでも、ポロス・サンシの2つのパートに分かれますが、ポロスのたたくメロディーに対して、サンシは3枚右側のビラを同じリズムでたたきます。(たとえば、ポロスが一番左のビラをたたく時は、サンシは左から4番目のビラをたたく。)これによって、5度前後の2音の和音を作り、なんともいえない響きが生まれます。 ちなみに、ガムランでは、相性のいい音というのは、この、”間に2枚ビラを挟んだ音同士(ガムランのセットによって調律が違うのでばらつきがありますが、だいたい5度前後の音)”と、”間に4枚ビラを挟んだ音(ほぼ一オクターブはなれた音)”の2種類といわれています。 クンダン クンダンは、基本的には、ワドンとラナンという両面太鼓2個を使って2人一組で演奏します。クンダンも、2人が、それぞれ違った音を違ったタイミングでたたいて、上記のガンサのコテカンのように、2人でリズムを作ります。たとえば、簡単な例で説明すると・・・
この例を見てもらうと分かるように、クンダンも、2人の気持ちがあっていないと、このリズムはとても出来上がりません。2人の人間が、まるで1人でたたいているかのように、相手の音と音の間に自分の音を入れていかなくてはならないのです。テンポもかなり速く、かつ、一定ではありません。ましてやクンダンは、他の人にテンポや音の強弱や、ブレイクなどの、合図を出す役割があるため、2人のリズムの基準となるテンポが一つになっていないと、他の人まで混乱してしまいます。 クンダンの場合、曲の種類によって、2人のうちどちらがリーダーになるかが、決まっています。手たたきのクンダンは、ワドンがリーダーになり、バチを使ってたたくクンダンやプレゴンガンという種類の曲のクンダンは、ラナンがリーダーになります。曲の中で、リーダーの方が、もう1人のクンダンの人より一音先に音を大きくして音の強弱の合図を出したり、テンポを変える、変わり目の合図を出したりします。リーダーが、よほど変な合図を出したりしない限り、もう一方のクンダン奏者は、リーダーに従わなくてはなりません。 クンダンのたたくリズムは、基本的なところは、曲によってあらかじめ決まっていますが、即興的に変形したり、ひっくり返したり、違うパターンを取り入れたりすることもあります。そうゆう場合も、リーダーが、即興で手を変えた場合は、もう一方のクンダン奏者は、反応よく自分のたたくリズムも変えて、ついていきます。よほど、気が合っていて、相手のたたく先の手を読めるか、もしくは、よほど反射神経が良くないと、ついてはいけません。ですから、クンダンのワドン・ラナンのペアは、長い間組んでじっくりと、作り上げていくもののようです。 余談ですが、手を、クンダン演奏中に手をひらひらさせたりする、アクションなども、リーダーに従うことになっているそうです。リーダーが、あまりアクションを好まない演奏者の場合、もう1人のクンダン奏者は、それに合わせて、リーダーよりも派手なアクションをしないようにします。音量も同じで、人によって大きな音でたたく人、やわらかい音でたたく人、などいろいろありますが、リーダーのタイプに合わせて、もう一方の人は音量も調節しなくてはならないようです。 手たたきのクンダンの場合、ワドンがリーダーになり、主に裏拍を担当します。この場合ラナンは主に表拍をたたきます。 (曲中、逆の部分も、沢山ありますが。)なぜ、リーダーなのに、主に裏拍担当なんだろう・・・?と思いませんか?そこが、ガムランの拍のとらえ方の面白いところなんです。私たち(日本人)の感覚で言う、裏拍が、曲の区切りの最初になるんです。・・・と、言葉で言っても、よく分からないと思いますので、これについては、詳しくは、”ゴンが最後”と、”いち・に・さんとサトゥ・ドゥア・ティガ”の章(両方ともまだ準備中です。ごめんなさい。)を参照してください。 ジャンル別一覧
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